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   オランウータンの追跡調査

キャンプ・カカップのスタッフは毎日オランウータンの追跡を続けています。

 

1995年のNHKの取材の折には総勢25名のキャンプスタッフが撮影に協力しました。)

 

 

 追跡は毎朝オランウータンが巣から起きるところから始まり、夕方巣を作って眠るところまで続けられます。追跡は二人一組、1日三交代で行われます。雨が多く、蒸し暑い森の中での追跡を一人の人が長時間行うことは大変です。継続追跡を続けていくためには何交代かで行う必要があります。たいていは1日三交代なので1個体を追うためには少なくとも6人が必要です。長期の場合は1年以上続けられているこの追跡ですが、1度見失ったが最後、広い森の中とうてい再び見つけ出すことは不可能です。

 オランウータンの追跡のポイントは「寝る場所=巣のありかを確認しておく」ことにあります。1度巣に入ってしまえば翌朝起き出すまで動くということはめったにありません。何らかの理由で巣を作れなかった場合、夜のうちにどこかに移動してしまい、翌日の追跡はほぼ不可能です。こうなるとそれまで続いた追跡作業がダメになってしまうのです。このため追跡は見失わないように細心の注意を払って行われます。

 オランウータンの目覚めは普通は6時ごろですが、早い日はまだ暗い5時半ごろから動き出します。一方、いつになっても動き出さないこともあります。このためメンバーはオランウータンの不確かな目覚めに合わせて夜明け前から巣の下で待機しなくてはならないのです。キャンプから遠いところに巣を作った場合は、朝の4時ごろにキャンプを出発します。かと思うと雨の為にいつになっても起き出さず、雨の中何時間も待たされることもあります。オスでは最高6日間も巣から出てこないものもありました。そんなときでも、いつ移動し始めるかわからないので辛抱強く木の下で待っていなくてはいけないのです。

 追跡研究を通じて、オランウータンの行動が断片的ではなく連続して明らかになってきました。単独生活者と考えられてきたオランウータンの間にも、実は母子関係、兄弟関係の結びつきがあり、広い森の中でお互いつかず離れず生活しているということもわかってきました。2頭の母親に連れられた赤ん坊が木の上でお互いに遊び会っている光景なども観察しています。

追跡メンバーは、はるか頭上2030mのオランウータンから目をそらすことなく行動の一つ一つを観察、記録していきます。どこを動き、何を食べ、どれくらい休息するか等、その時間と距離を細かく記録していきます。2人一組で追跡する大きな理由は「オランウータンを見失わないこと」にあります。突如移動をはじめるオランウータンの行動はなかなか予測がつきません。木の上でのんびりと採食していると思っていると、急に移動し始めます。相手は慣れたもの、樹上をひょいひょいとあっという間に消えてしまいます。一方追跡する側は、ジャングルの中。もちろん道はないし、倒木や下草を刈りながら、必死に後を追わなくてはなりません。一人がとにかく後を追い、残ったもう一人が荷物をまとめて後から追いかけていきます。森をよく知っている現地の人でさえ方向感覚を失い、森に迷ってしまうこともあるくらいです。

夕方巣作りを終えたことを確認して1日の観察は終わります。キャンプに戻り、1日の観察を報告し、レポートを作成し、翌日の観察への引継ぎをします。巣の場所を確認した2人のうちの1人が翌朝の追跡メンバーの1人になります。彼らの追跡はこのように実に見事なチームプレーで続けられているのです。このシステムは長い間の森の中での観察経験から編み出されたものです。そして何より、この仕事のなかに森への愛着心や情熱を見出し、単なるお仕着せの仕事ではない誇りを感じているのです。

 森林火災の消火活動をするメンバーと焼け跡のオランウータン。地上にすわりこみ、しばらくじっと焼けた森をみていました。チンパンジーは知能が高いといわれていますがオランウータンもなかなかなもの。彼らの行動は実に思慮ぶかい?!いつもじっと森の様子を観察しています。ですから毎日彼らを追跡しているキャンプのメンバーたちもオランウータンを観察しているつもりが、実は自分達もオランウータンに観察されているのです。焼けた後の森という悪環境の中で子育てをしているメスは、人間をはじめ外界に対し今非常にナーバスになっています。